国立能楽堂定例公演を鑑賞。今月のテーマは千利休生誕500年。
狂言「通円」は、日本最古のお茶屋として有名な通円の茶坊主のお話。囃子・地謡があって、シテが面を着ける能の形式の狂言だ。こういう型の狂言を「舞狂言」というらしい。
お隣の席には、茶道をやっていると思われる女子大生。しぐさや詞の端々にお茶の言葉が出てくるので、より深く舞台を味わえたのではないかと、ちょとうらやましく思えた。
能は「八島」。以前にも観てこのブログにも書いたことがあるけれけれど、今回は、「弓流」と「那須」の小書。「那須」では、平家の軍船に立てられた扇の的を那須与一が射ち落す場面をアイが演技を伴って語る。狂言方にとっては習の曲に数えられるのではないだろうか。
「八島」は、義経が屋島の合戦のエピソードを語る曲。義経は悲しいまでに戦が好き。大河ドラマの「鎌倉殿の13人」が描く義経のキャラがまさにこれで、三谷幸喜の解釈はなかなかだなと思ったのだった。
さて、この日の装い。
きものは佐波理の蝋結染め訪問着、帯は尾峨佐染繍の袋帯。
寒い雨の日曜日は、コロナ禍の影響で3回も中止になり、漸く開催された三遊亭兼好師匠をお招きしての青山きもの学院華の会@KKRホテル東京へ。
お噺は、「強情灸」と「花見酒」。久しぶりの兼好ワールドに、しばし嫌なことを忘れてお腹を抱えて笑った。
この日のきものは小糸染芸さんの小紋に、メルカリで手に入れたタンポポ柄の袋帯。
まだまだ桜の季節ということで、皆さん、桜づくしのお召し物だと思ったので、あえてタンポポに。
北信右岸シャルドネの中でも、シャトー・メルシャンのアイコンシリーズの「リヴァリス」は格別。
長野県北信地区の千曲川右岸で栽培したシャルドネ54樽から、シャトーメルシャンのスタッフ全員がテイスティングして13樽を選抜してブレンドしたという。
黄色い果実の香りの後に来る、ヴァニラのようなトーストのようなバターのような樽由来の複雑な香りが奥深い。
酸と果実味もたっぷりでバランスがいいし、ミネラル感が小憎らしい。
このワインは、白のくせに4~5年寝かせたほうがいいといわれているのだけれど、飲んでしまった。
カキフライと粉チーズを聞かせたリゾットとともに。
去年だったか、北信右岸シャルドネのミッドナイトハーベストを飲んだのだけれど、こちらは真夜中の寒い時間帯に収穫したブドウを使う。こちらのほうが酸とミネラル感が強かったような気がする。
同じ北信右岸でも、いろいろばヴァージョンがあって面白い。
雨の降る寒い夜に国立能楽堂へ。
今月鑑賞する能は「当麻」。當麻寺の曼陀羅に纏わる中将姫伝説をもとに作られた作品。舞台となっている日は釈迦の命日の旧暦2月15日。ちょうど今頃だ。
前場の最後に老尼と連れの女性が去っていく姿は、二上の峯を登って昇天する阿弥陀如来と菩薩なのだそうだ。根底にあるのは阿弥陀信仰。西方極楽浄土の考え方がわかるとより一層面白いのかもしれない。
この日は満席。シテが観世清和さんだったからだろうか。私にはまだ、役者の良し悪しはわからないのだけど、増面を着けた中将姫の気品の高い舞いは、観世流宗家だからこそ表現できたのだろうか。
この日の装い
和田光正の絵羽小紋に、小袖屋泰庵オリジナル永治屋清左衛門の高野槙紋袋帯。帯締めに道明の唐組を選んだのだけれど、失敗だったみたい。
春の雰囲気たっぷりの帯をメルカリでゲット。揚羽蝶が舞う蒲公英のそばで春の妖精が踊っているような、もかわいい袋帯。こんなの締めたら、それだけで心がうきうきしてしまう。
そんな帯を締めて、春の香たっぷりな一日にサントリー美術館へ。
正倉院宝物の再現模造品に焦点を当てた展覧会。
明治時代に奈良で開催された博覧会を機に、宝物の再現模造のプロジェクトが始まったのだとか。模造品というと聞こえが悪いが、材料や技法、構造を忠実に再現しようとする過程が紹介され、当時から現代に至る名工たちの熟練の技や最新の科学技術がなければできないことだったのだと、唸らされた。
精巧な技術の裏側がみられて、ある意味、本物をみるより刺激的な展覧会だった。