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紗織と平織

先日、所属している踊りのグループが着物のあれこれについての講習会を開催した。講師は踊りの大先生。先生の経験を通して知ったリ身に着けたりした着物のあれこれを話してくださったのだけれど、先生は踊りの師匠ではあるけれど着物の専門家ではないので、いろいろはてな?なことが多かった。

一番は、織の着物はみんな紬だと思っていらしたこと。紬は織の着物だけれど逆は成り立たない。お召しを紬とおっしゃたのにはびっくりした。世間の知識っていうのは、思い込みや間違いも多くある、だから、人から聞いたことをそのまま鵜呑みにしてはいけないとつくづく思った次第。

もう一つは、夏の薄物はみんな紗だと思っていらしたこと。

でも、サイエンスではない世界では、いろいろと恣意的な定義というのがたくさんあるらしいこともわかった。

前出の先生が夏の琉球絣を紗だとおっしゃっていたので、絣を紗で織るってできるのかしら? と疑問に思い調べてみたら、夏の透ける紬のことを「夏紬=紗紬」というらしい。組織ではなく、見た目の透け感で「紗」ということがあるのだとわかった。

絣は、基本的に文様になるように経糸と緯糸を部分的に防染して平組織で織ったものなのだけれど、たぶん、「紗」紬ということで少し高級感を出したいという商売上の都合だったのかもしれない。まあ、今では琉球絣というだけで十分に高級だけれど。

因みに、紗は難しい織とされていて、その組織は平織とは全く異なる。

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経糸2本(綟り経と地経)が一組になって、綟り経1本が緯糸1本ごとに地経1本と右や左に交錯している。図にするとこんな感じ↓
紗組織

下の画像は平織
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これは、紗布コートと称する夏用雨コートの生地を拡大したもの。「紗」といっているけれど平織。いわゆる夏物の薄い生地を「紗」と称しているのだろう商品だ。

着物の世界は定義も品質もいろいろあって、いい意味でも悪い意味でも奥が深いと思うこのごろである。

 

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大竹しのぶを観る

ずっとお世話になっている着付け教室主催のきものでおでかけする「青山華の会」の企画で、大竹しのぶ主演の『ふるあめりかに袖はぬらさじ』というお芝居を新橋演舞場で鑑賞した。大竹しのぶのお芝居はぜひ一度見てみたいと思ていたのでいい機会だった。

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原作は有吉佐和子が1970年に婦人公論に発表した『亀遊の死』。有吉自身が昭和の大女優杉村春子のために戯曲化した作品だそうだ。歌舞伎でも坂東玉三郎によって上演されているそうだ。

ストーリーはちょっと検索すればすぐ出てくるので、ここには書かないけれど、人の噂や昔語りは、その話を信じたい人の期待した通りに尾ひれがついて膨らんでいくとうことだな、と思った次第。事実ではないけれど、その話で癒される、元気になるなんてことあるもの。

大竹しのぶは、人が期待する物語を語るお園という芸者の役。事実ではないけれど嘘でもない巷の話によって、お園は古くからの友だちだった遊女が立派に死んだのだ誇らしさを感じたのかもしれない。そして、その話を語る自分も誇らしく思ったのかもしれない。大竹しのぶはそんなお園の気持ちをとてもよく表現していたように思う。

遊女亀遊が自害した理由が釈然としないので、有吉佐和子の戯曲本も読みたいと思ったけれど、文庫なのに中高本にプレミアついて高い!  図書館で予約だわ。


 

theme : 演劇
genre : 学問・文化・芸術

夏のコーデまとめ

この夏はうれしいことに、久しぶりに本業が忙しく、出かけることが少なかったので、着物を着る回数も激減だった。ブログもなかなか更新できずだったので、この夏のコーデとお出かけの記録をまとめておく。
<7月>
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左上から右へ順に

① 踊りのお稽古へ
きものは、よねざわ新田、帯は博多織

② 京都きもの友禅の着付け教室へ
きものは、夏大島に見えるかもしれないけれど龍郷柄の紋紗。中賀和 さん作
帯はクレマティスの絽塩瀨

③ 七夕の夜、浴衣で飲み会~ご近所のバーへ
浴衣は有松鳴海絞、半幅帯は赤いトンボちゃん柄の西陣

④ 味方玄さんのテアトルノウを宝生能楽堂で鑑賞
きものは永治屋清左衛門永井織物)のリーフ柄の紗・唐織
帯は尾峨佐染繍製ユリの刺繍の名古屋帯

⑤ 踊りのお稽古
きものは、しルック
帯は栗山吉三郎を珍しく銀座結びに、と言っても後姿は見えない。

⑥ 梅若会定式能@梅若能学院会館で、川口晃平さんの「三輪」を鑑賞
きものは、10年前に買った麻のリサイクルきもの。
帯も、リサイクルの麻の袋帯

⑦ 京都きもの友禅の着付け教室へ
忙しさのあまり、吊るしっぱなしにしてた麻のきもの
帯は 帯は、やふそ紅型工房の貝にススキの名古屋帯

⑧ 着物やさんの催事へ
きものは②と同じ
奄美大島+鹿児島大島+博多織のコラボの八寸博多帯

<8月>
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左上から右へ順に

① 青山きもの学院サマーパーティー@セルリアンタワー東急ホテルへ
きものは 尾峨佐染繍さんの絽の訪問着
帯は西陣まいづるさんの袋帯

② 京都きもの友禅着付け教室へ
きものは小糸染芸さんの紋紗
帯は、菱屋善兵衛さん一栞ブランドのひまわり柄の名古屋

③ 京都きもの友禅着付け教室へ
きものは7月の①とおなじ
帯は桔梗文様の麻名古屋

④ 踊りのお稽古へ
きものはシルック
帯は菱屋善兵衛さんの半幅帯

⑤ 着物屋さんの催事へ
きものは和田光正の付け下げ
帯は青山きもの山きもの学院オリジナル 西陣まいづるさん製名古屋

⑥ 悉皆さんへ娘の着物の仕立てを依頼に
きものは7月の②とおなじ
帯は7月の⑦とおなじ 

 


theme : 着物
genre : ファッション・ブランド

tag : 尾峨佐染繍永治屋清左衛門

6月のコディネートまとめ

7月ももうほぼ半分経ってしまったけれど、6月のコーデをまとめておく。

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左上から右へ順に
① きものの展示会へ
きものも帯も スコープココさん製
帯はお気に入り。大きなダリアが織り込んである。お太鼓も載せればよかったな。

② いつもお世話になっている悉皆さんへ
きものは、越後印伝の小紋
帯は、尾峨佐染繍さんのワヤンクリを刺繍した帯
お店にちょうど女優の一色采子さんがいらっしゃっていて、帯をとてもほめてくださった。

③ 青山華の会@ホテルグランドアーク半蔵門へ
この日の会は篠笛・能管奏者の望月輝美舗さんの演奏
きものは、與邦国花織
帯は、奄美大島紬+鹿児島大島紬+博多織 がコラボした八寸博多帯

④ 踊りのお稽古@調布
来年10月の観世能楽堂での舞台に向けて新たなスタートの日
久留米絣に半幅帯で

⑤ 着付け教室@新宿
この日のテーマは「浴衣の着付けと半幅帯」だったので、襟をつけて浴衣を着物風に
浴衣は有松鳴海絞、半幅帯は、米沢織

⑥ 踊りのお稽古@調布
きものは、絹糸が少し入っている紬風シルック。
帯は、菱屋善兵衛さんの半幅帯

⑦ ちょこっと日本橋あたりまで野暮用
きものは、米沢の白根澤織物さんのウサギちゃん柄の捩り織
帯は、やふそ紅型工房さんの琉球紅型名古屋帯

⑧ 着付け教室@新宿→某業界団体の総会@虎ノ門
きものは、夏大島
帯は③と同じ

⑨ 六本木ヒルズで元の職場の先輩とデート
きものも帯も、てらし~こと寺島利男
以上

 

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genre : ファッション・ブランド

tag : 尾峨佐染繍スコープココ寺島利男

夏の汗染み対策は難題

梅雨入りしてから暫く涼しい日が続いていた東京だが、ここ数日、暑い!

暑い日に着物を着るのは別に苦にならないのだけれど、汗が心配。汗がついたまま放っておくと、変色してシミになる。だから、下着には汗取り襦袢を愛用している。木綿の肌襦袢の内側に汗取り用のメッシュ布が重なっている。その分、少々厚みがある。しっかり汗を吸ってくれるし、着心地もいい。

愛用の汗取り襦袢はこちら。

でも、も少し薄手でしっかり汗を吸ってくれる肌襦袢はないのだろうか、といつも物色している。このブログでも何度か記事にしている。


最近、ふと、これは絶対無理そうと思い試していなかった東レのフィールドセンサーという機能性生地を使った肌襦袢のことを思い出した。

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「汗を素早く吸収し、蒸散させるので、常にサラッと、爽やか」という謳い文句。スポーツウェアーにはよく使われている。試してもいないのに、拒絶することはないと、6月に入ってから何度か着用している。

そして、東京33.8度だったという昨日、長襦袢の下にこの肌襦袢を着て、六本木ヒルズあたりをお日様の一番高い時間帯に歩いてきた。そして帰宅後、着物を脱ぐとこれ ↓

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背中に見事な汗がしっかり。フィールドセンサー、だめじゃん。

というわけで、今回も、汗取り襦袢より優れる商品は見つからずであった。

さて、着物についてしまった汗をどうするか。
私は、プロ用霧吹きで細かい霧を吹きかけて、タオルで拭き取る処置をする。一般的には霧吹きは御法度ということになっているけれど、ガード加工してある生地に水垂れしない細かい霧の出る霧吹きを使うなら問題ないと思う。これで失敗したことはない。

霧吹きすると、汗の部分がくっきり浮き出てくる。こんな感じ↓

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汗が浮き出た水分をタオルで吸い取って、ハンガーに吊して放置して乾燥。

ちなみに、夏に活躍する愛用の霧吹きは油圧式オートマチックスプレー。

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theme : 着物
genre : ファッション・ブランド

5月のきものコーデまとめ

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左上から右へ順に
① 踊りのお稽古
きものは友人のお母さまの遺品、帯は菱屋善兵衛さんの半幅帯

①と②の間に 「5月第2週振り返り‐‐きもの」で書いたのが2つ。

きものは永治屋清左衛門の唐衣、帯も永治屋清左衛門の真綿袋帯

③ 調布伝統文化交流会で踊る演目の全体稽古
きものは黄八丈の単衣、帯は米沢の紬の半幅帯

④ 龍工房さんを講師に組紐体験でミサンガ作り
きものは本藍のろうけつ染め単衣、帯は尾峨佐染繍さんの相良刺繍の名古屋帯

⑤  味方玄さんお「能役者が語る能の名品」を受講
きものは越後印伝を施した単衣、帯は型染の名古屋帯

きものは尾峨佐染繍さんの、野蚕紬にインドネシアのバティックで染めた訪問着、帯も尾峨佐染繍さんのワヤンクリ柄の刺繍袋帯

⑦ お仕事で翻訳学校の講師
きものは西陣宮田織物さんの単衣、帯は渡文さんのすくい織八寸名古屋帯

⑧ 調布伝統文化交流会 リハーサル
きものは本藍染の単衣、帯は十日町友禅の染帯

きものは 和田光正さんの絵羽小紋、帯はスコープココさんのダリア柄の袋帯

5月は後半に突然仕事が重なってちょっと疲れたけれど、充実していたかな?  きものの日は全部で11日だった。

 

tag : 尾峨佐染繍永治屋清左衛門藍染スコープココ

5月第2週振り返り--きもの

自分の着物コーディネートを振り返る。

●火曜日 「味方玄の能楽ちょっといい話」へのスタイル。
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寺島利男の小紋と尾峨佐染繍の汕頭刺繍の名古屋帯
5月も中旬になればもう単衣だろと思っていたら、今週は意外に涼しかったのでまだ袷を着ている。
帯締めは道明の唐組、帯揚げ縹とグレーのちりめん
帯揚げを赤系に知ればよかったかな~。
帯のお太鼓がよれよれ。何で? そう見えるだけかしら?

●金曜日 着付け教室@青山きもの学院
月に1度の着付けのお稽古。振袖に華扇という結び方を練習。何年やっても人に着付けるのは苦手だ。
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奥順さんの結城縮(袷)に縮緬地に型染の名古屋帯。帯のお太鼓部分には螺鈿が施してあるのだけれど、ほとんど目立たないというのが残念。
半衿は黒のレース。
帯締めは、龍工房さんの冠組。帯揚げは、和小物さくらさん(たぶん)の黄緑と黄色と白の縞。
結構、好きなコーデ。
でも、着物に被りが出ている。裾の方は表被り、袖は裏被り。身幅も微妙に足りない(太った)。これは完全に仕立て直ししたほうがいい。洗い張りもしてもらって出直しだ。いまは苦しいので、そのうちに。

 


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特別な日の装い

アイーダの鑑賞は、きものsalon というきもの雑誌が主催するサロン・ド・オペラの会に参加してのことだった。きものを着てオペラを観てから、その余韻とともにディナーを楽しむという会で、年に1度(もしかした2回?)開催されるイベントだ。何度か参加させていただきている。人気の高いイベントなので抽選があったりする。今回は先着順だったおかげで参加できた。

一人でオペラを観るときは、2階か3階の真ん中のブロックのシート(A席かB席)をとるのだけれど、この会の時だけはS席。そういう意味でも私にとっては特別な会だ。

きものは、七代目永治屋清左衛門の唐織の訪問着に、スコープココのダリヤ文様の袋帯。清左衛門さんのこのきものはなかなか着る機会がなくて、数年タンスに眠っていたのだけれど、ようやく外の空気を吸わせてあげられたという感じ。

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開場に、同じ着物で色違いをお召しになっている方がいらしてびっくりしたり、うれしかったり。

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彼女は、薄緑のお色目(@新国立劇場)

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きものsalonの編集長さんもご一緒に(ディナー会場の東郷記念館)

このオペラの会はゲストも豪華。今回は、女優の賀来千香子さん。三大テノールの追っかけをやっていたお話とか、おきもののお話とか、とても楽しいいトークショーだった。大谷選手のファンらしく、最後は大谷選手をべた褒めしてらした。今のところ、彼は日本の宝のような存在だから、話題としてはどうしても避けられないかもしれない。

楽しい時間はあっという間に過ぎた。

 

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春を感じて

「こがねい春の能」に出かけた時の装い。迷った挙句、春を感じられる装いに。
ってどこが? って言われるかもと思っていたら、娘に「春らしい色だね」と褒められた。

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羽織はもう薄物でもいいかな、と思って出かけたのだけれど、帰りの時間には冷たい風が身に染みた。日が暮れると、まだまだ寒い日もある。

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着物は結城縮。結城縮はシャリ間のある結城紬で単衣に仕立てるのが普通なのだと思うけど、今頃の季節に着たくてあえて袷で仕立てた一枚。これも、やっぱり被りが出ているなぁ。10年前に仕立てたので、あれからちと太ってしまったため、身幅が少々足りない。被りもあることだし、そのうちに洗い張りをして市立て直しをしようと思っている。

帯は、辻が花文様の染の袋帯。柔らかくて締めづらいので出番が少ない。この着物との合わせるのは初めてだ。悪くない組み合わせだと思う。私、こういうの好きだな。

帯揚げは、少し青みが買ったグレーの染疋田。いつも、帯揚げの選択で失敗するのだけれど、今回は満足している。

草履も写真を撮ればよかったなぁ。深緑にブルーが入ったロートン織の鼻緒が着物と羽織にぴったり合っていて、今日のコーデは最高! と気分が上がったのだった。

 

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クリムトを纏ってエゴン・シーレ展

もう1週間も前のことになるけれど、会期末間近に迫る「エゴン・シーレ展」へ上野の東京都美術館まで出かけた。上野は、散りかけた満開の桜が美しく、観光客でにぎわっていた。エゴン・シーレ展も、平日にもかかわらずたくさんの人が訪れていた。

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同時代にウィーンで活動していた画家の作品もたくさん出品されていて(もちろんクリムトも)、見ごたえのある展覧会だった。エゴン・シーレは夭逝の天才画家というイメージだったけど、本当に天才だった。人物のとらえ方が抜きんでている。

そして、この日の装いは、同時代、同じ場所で活躍し、しかも、エゴン・シーレをとても可愛がったといクリムトを連想してしまう着物。

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なんでこんな派手な着物を買ってしまったのだろうと後悔していたのだけれど、着てみるといい感じで、好きな着物の一枚になりそう。不思議。

 

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Author:miemama
お着物好きの悩み多き特許翻訳者

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