fc2ブログ

きもの展@東京国立博物館

猛暑日の昨日、上野の東京国立博物館で開催されている『きもの展』に行ってきた。

20200816153505d17.jpg

予約制で、観覧は90分以内でとのことだったが、展示物が膨大なので90分では見切れない。なのでどうしても詰まる。というわけで結構、蜜な空間であった。

着物の意匠の変遷を鎌倉時代から現代(さらには将来に向けて?)たどるというコンセプトのような展覧会で、文様には時代が反映されていることがよくわかる興味深い展覧会だった。

これまで様々なところで開催されたことのある、ある特定の時代のきものの展覧会を全部まとめたような、でも小袖中心の展覧会とも言える。

「モダニズムのきもの」と題された明治~昭和初期の着物は、現代の着物に直接つながるので、見ていて楽しかった。山の手の奥様方の西洋画風な大胆な柄や帯とのコーディネートは、流行の中にもある種の気品があって美しいし、ビビッドな色の幾何学模様を配した銘仙の豊富なこと。

5年くらい前に泉屋博古館で開催された「きものモダニズム」展で、銘仙を随分見たことを思い出したり、NHKの朝ドラ「エール」で双浦環が着ているきものを思い出したりした。

明治から昭和初期にかけては、だれもがおしゃれに着物を着ることができた時代なのかもしれない。

現在のきものの章には、岡本太郎、久保田一竹、現代的な意匠を伝統的な技法で表現する人間国宝として森口邦彦、鈴木滋人、土屋順紀の作品が並んでいた。鈴木滋人の作品は実物を見るのは初めて。写真ではわからない木版摺の細かさに、これが人間国宝の技なのかと感動した。土屋順紀の紋紗には本当にあこがれる。見るたびにため息が出てしまう。

一竹の辻が花については、2代目の作品は何度も見ているし、先日は展示会で2代目にお目にかかったけれど、自分では着てみたいと思ったことは一度もない。でも、初代の展示されていたものは、きるものというよりは壮大な絵画作品のようで、力強さに圧倒された。

20200816154035205.jpg
(2代目一竹さんと on August 5, 2020@雅叙園)

そして、yoshikimono がきものを未来につなげてくれるのだろうか?  と思いながら会場を後にした。

そうそう、1.5kgもの図録も買ってしまった。装丁にお金をかけすぎなような……。しばらく、展覧会に行っても図録を買うのを控えていたが、貴重な資料になるし、買っておけばよかったと後悔することが多いので。
catalog-cover.jpg

そして、この日の装い。

2020081615344046c.jpg

永井織物の紋紗(8代目(予定)さんのだと7代目清左衛門がおっしゃっていた)に、小菊の刺繍の名古屋帯。

最近、下にちゃんと汗取り襦袢を着たほうが暑くないような気がする。襦袢が吸った汗の気化熱のおかげかもしれない。ステテコはいていたほうが涼しく感じるように。

        

スポンサーサイト



tag : 土屋順紀永治屋清左衛門文様

本場結城紬と重要無形文化財

先日、お世話して(もいるし、貢いでも)いる呉服屋さんに行ったら、ぜひ私に見せたい珍しいものがあると、本場結城紬の反物を出してきた。

20200811151634fac.jpg

重要無形文化財の貴重なものだ、と目を輝かせて写真の向こう側の兄ちゃん二人が言うのだが、証紙は茶色で「高機」との記載。

????? と思う私。彼らは決して嘘を言っているのではないだろう。ただ、呉服屋さんなのに知らないだけ。本場結城紬と重要無形文化財に指定された方法で作られた結城紬との区別がついていないのだ。

てか、重要無形文化財の結城紬の反物なんてものは、そもそもない。
重要無形文化財に指定されているのは製造技術であって、品物ではない。あるとすれば、重要無形文化財に指定された技術で作られた商品である。

ただし、15年くらい前までは重要無形文化財に指定された技術で作られたものには、「重要無形文化財」という証紙が貼られていたので、勘違いもあったかもしれない。

結城紬の製法が重要無形文化財に指定されたのは昭和31年。その当時の技術が文化財指定の条件。
その条件は材料、染め方、織り方の3つ。
① 経糸、緯糸ともに真綿より手つむぎした無撚糸を使用すること(材料)
② 絣模様を付ける場合は手くびりによること(染め)
③ いざり機(地機)で織ること(織)

手くびりは地色の濃い糸に絣をつけるのには有効だけれど、淡い地色に濃い絣模様をつけるのは難しく、コントラストがでにくい。

地色の濃いきものが主流だった時代には問題なかったのだけれど、白地の紬が流行るようになった昭和30年代以降は、白地に絣をつける際に、染料を直接擦り付ける方法がとられるようになった。でも、この染料を擦り付ける方法は重要無形文化財にに指定された方法ではない。

手つむぎの糸を使った地機の平織であるにも関わらず、重要無形文化財の証紙が貼れない。難しい技術で苦労して作っても価値が低いとみなされてしまう。ということで、産地側は2005年に、「重要無形文化財」の文字のない「本場結城紬」の証紙に切り替えてたという経緯がある。

ちなみに、本場結城紬は以下の4種類

地機の平織
地機の縮織
高機の平織
高機の縮織

地機の本場結城縮は特に高価でなのだが、重要無形文化財の方法で作られたものではない。本場といえば重要無形文化財というわけではない。まして、高機で織ったものは。

呉服屋さんならちゃんと勉強しておこうね。兄ちゃん。

とは言え、せっかく俄か仕込みの知識をひけらかしながらわざわざ見せてくれたので、当ててみた。

20200811161425fcf.jpg 

2020081116144080e.jpg

私的には、帯のほうが気になったのだった。

そして、この日の装い
202008111515589f0.jpg

夏大島の着物に能登上布の八寸帯

        

プロフィール

miemama

Author:miemama
お着物好きの悩み多き特許翻訳者

カテゴリ
「趣味のきもの」記事一覧
「翻訳という仕事」記事一覧
「お酒」記事一覧
「クラシックエンタメ」記事一覧
カレンダー
07 | 2020/08 | 09
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最新記事
検索フォーム
月別(表示数指定)
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク
QRコード
QR
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

訪問者