能楽『碇潜』のお話
「碇潜」と書いて 「いかりかづき」と読むそうだ。
かずき(潜き)って私のPCでは変換できないのだけれど、広辞苑には載っていた。「水中にもぐること。または、その人。」だそうだ。「淡海(おうみ)の海に潜せな」と古事記の例も。
「碇潜」は、「壇ノ浦の戦い」で海に沈んだ平家の武将のお話。祖母・二位尼(にいのあま)にいざなわれて、三種の神器とともに入水した幼い安徳天皇と運命を共にした総大将・平知盛の修羅の苦しみ描いた曲。
平家の菩提を弔うため壇ノ浦までやって来た平家の縁者だった僧が、浦の渡し船の船頭に法華経を読誦してやった代わりに、壇ノ浦の戦いの様子を語るよう所望する。すると、船頭は平教経の奮戦のさまを語って、自分こそ平家の武将の幽霊だと言って消える。僧が平家のために法華経を手向けていると、総大将・平知盛の幽霊が現れ、平家滅亡と自らの最期の様子を語って消えてゆく、というストーリーだ。
先週開催された歌舞伎座花篭講座 能役者が語る能の名品・第6回で 味方玄さんが語ったのがこの曲だった。 7月に味方さんが主催されるテアトル・ノウの演目でもある。
このチラシのシーンは、平知盛が入水するときに、再び浮かび上がってくることのないよう、碇を担いで波の底に沈んでいったという言い伝えを表現したシーン。
あまり出ない曲だそうで、古い資料をあたって研究なさっているご様子。どんな工夫がなされるのか、7月の公演が楽しみである。
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