「杜若」と「碇潜」を鑑賞@テアトル・ノウ東京公演
能楽師シテ方の味方玄さんが主催するお能の公演、テアトル・ノウ東京公演を鑑賞した。
今回は「杜若」恋之舞と「碇潜」船出之習。
この2つの演目については、以前、味方さんが講演なさっていて、その時のことをここでも書いている。
杜若は、三河国八橋にさしかかった旅の僧が、美しく咲く杜若を眺めていると、杜若の精だというの女が現れて、その地でかつて杜若の歌を詠んだ在原業平と彼の恋の様々を語りつつ謡い舞う、というお話。歌や舞を見せる作品だ。
味方さんの所作は美しい。足の運びにはいつも見とれてしまう。橋がかりから舞台に出ていくときの歩く姿は、台車に乗っているのか氷の上を滑っているのかと思うほど。スーっと滑るように移動していく。味方さんが舞う杜若の精は、高子の后のようでもあり、業平のようでもあり、妖艶。クリ・サシ・クセを省略せず「伊勢物語」の文と歌をちりばめながら業平の跡を優美に語る舞から序の舞へと、中を抜かずに1時間半。その体力にも感嘆した。
狂言「水汲」と、観世淳夫、観世喜正、片山九郎右衛門による仕舞を挟んで「碇潜」。
「碇潜」は、壇之浦の合戦で平家一門が滅亡した姿を描く作品。決まった台本がないそうだが、今回は、初演が好評だった台本・演出をもとに再構成したものだそうだ。
壇之浦へ沈んだ平家一門を弔うために早鞆までやってきた都の僧が、壇之浦まで漁翁の船に乗せてもらう。漁翁は僧の請いに応えて、壇之浦の合戦における能登守教経の活躍を語りだすが、やがてその昔語りと現実が重なり、教経とその敵方武将がともに消えて(海に沈んで)前場が終わる。
後場は、夜の海に大きな船が表れる幻想的な場面からはじまる。船の中から人の声が聞こえ、船に掛けられていた幕が下ろされると安徳天皇、二位の尼、大納言局が座っている。傍らに平知盛が控えている。安徳天皇、二位の尼、大納言局が入水すると、源平の戦いがフラッシュバックするように、知盛が大長刀を振るって回る。やがて舟橋に括り付けた碇の綱を手繰り寄せて、大きな怒りを高々と持ち上げ、海に沈んでいく。
知盛の無念、人間のはかなさを表現しながらのダイナミックな活劇のような舞は圧巻だった。
終始、魅せられっぱなしの土曜の午後でした。
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